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3.スタッフ
設立者でもある心理学者のほか、看護婦、ソーシャルワーカーのほか、ボランティア、牧師、兵役免除の奉仕者がケアに当たっている。医師は常駐していず、週2回地域の医師が診察にあたっている。積極的な治療は行わず、症状漢和を主としている。
ナースの一人は2年半にわたってイギリスでペインコントロールとホスピスケアのトレーニングを受けており、ある程度の処方や処置はまかされている。
ドイツにはこのような施設が十数カ所あるという。
ボランティアは約50名。一日3人位が活動している。訪問担当ナースによって訪問先が振り分けられ、在宅ケアに当たっている。ボランティアの研修期間は約3ヵ月、患者さんとの対応など主として心理面の研修が行われる。
4.ホスピスの原型をみる
多くの方は、住み慣れた自宅で、家族や親しい方たちに見守られて最後を送りたいと願っているのではないだろうか。けれどもさまざまな事情でそれが許されないとき、自宅の近くで、面会も自由、生活も普段と変わりなくできる施設があればどんなによいだろう。その思いを満たしてくれるのがこの町中にあるホスピスではないだろうか。
一軒のやや広めの家で、限りなく自宅に近い雰囲気の中で、少数のスタッフと家族的なかわりをもち、行き届いたケアを受ける。
もし、私たちの住んでいる自宅の隣がホスピスだったらどうだろうか。お隣のよしみで、困っていることがあれば手を貸したり、頂き物があればおすそ分けしたりと、間接的にいくらでもサポートができる。
また、患者さんのほうでも、特別な施設に隔離されたという隔絶感をもつことなく、これまでどおりの生活環境の中で過ごすことができるのである。
加えて、経済的な面でも、地域の人々が自分たちのホスピスとして支援するのではないだろうか。
日本においても、ホスピスの必要性についてはようやく国民の合意が得られつあるところだが、行政や一部の医療関係者に委ねるだけでなく、市民の側からも地域に根ざしたホスピスの実現に取り組むことも大切だと痛感させられた。
●クリストフォルス・ホスピス協会(ミュンヘン)
ミュンヘン赤十字広場近くにあるこのホスピス協会は1985年に設立された。主に在宅でのがん末期患者のケアと、そのための要員養成にあたっている。
所長のほかに、3人のホスピスナースと2人のソーシャルワーカー、2人のオフィスタッフがいる。ここでのホスピスナースの役割は、直接患者のケアに当たるのではなく、患者が何を必要としているかを見極め、症状緩和を医師とともに考え、一番適当なセラピストを送り込むというコーディネーターの役割を果たす。
1年に約230から250件を扱うが、約90名のボランティアと一緒に常時80人前後のケアに当たっている。ボランティアの役割は看護の手助けが主で、90パーセントが45から60歳の女性である。
このような活動に必要な資金は、州の援助と一般からの寄付に頼るしかなく、所長の役割の中には、資金を集めることでもあるという。

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ライン河ごしにケルン大聖堂をのぞむ

 

 

 

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